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2012年6月14日(木)

 写真とはその時その場にしかなかった光景をその瞬間に平面に閉じ込めて缶詰にしたようなもので、だから蓋を開ける度に嘗て有ったその時が再生される。当たり前のようでいて実に不思議なものだと思う。
 

 同じ業界内で転職して7年半ほどになる。

 だからやはり元いた会社は精密機器メーカーなのだが僕がいた部門はもう無い。僕の転職後1年か2年だったかして業績が思わしくないことからリストラされることとなったのだ。倒産した訳でもなく解雇などの非常・非情手段が採られたのでもなく、それは幸運にもそれは更なる大手メーカーとの合併だった。口の悪い人はそれを部門切り売りと呼ぶかもしれないがより安定した巨人の一部門として活動を継続できるのだから残っていた元同僚先輩上司達にとっては良い話だったに違いない。

 バブル後遺症の失われた10年とか20年とか呼ばれる時代に突入してしまう前、十数年務めることになるその会社に入社したときの同期入社は数百人いたはずで、当時大阪の江坂にあった僕の最初のオフィスに配属されたのはその中の6人だった。女3人男3人。探せばどこかに当時の写真(フィルムで撮っていた時代だ)が残っているはずだ。そして先輩達。配属された部門にはやがてアフターサービスの専門家として欧米の現地法人に駐在派遣される予定の、あるいは駐在を経験し帰国した先輩諸氏が多数いた。僕もその人達に続けとドイツへ渡りやがて帰国、何だかんだで転職し今インドにいる。

>車中より・ハイデラバード
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 今日僕は出張でハイデラバードのとある元ディーラーを訪問していた。「元」ではあるが今般再びそこと契約して我が社の製品のアフターサービスをやってもらうことになり、サービスセンター開設のために訪問したのだった。その会社の本店はバンガロールにあり、数社(日本企業ではない)のディストリビューションを請け負っている。一昔前には僕のいる業界(それは日本企業が圧倒的世界シェアを持つ業界だ)の数社のディーラーだった。今回ハイデラバードに開設するのは我が社専用の、サービスセンターだけのための施設である。社長は少々寝ぼけた感じのおっさんで、残念ながらその「一昔前」ほど羽振りはよろしくないようだったが、かつては業界各社の招きで日本やシンガポールを訪れたこともあり、僕のいた前の会社、合併前の僕の元勤務先をディーラーとして訪問したこともあったらしい。おっさんは昔から写真を撮るのが好きだったようで、その遺伝子が生きているのか現に今日も僕ら(今日は現地セールスを含め4名での訪問である)が話し合っている傍で社員がやたらと僕らの写真を撮りまくっていた。彼はいつもそうして来たのだろう。だから日本へ来たとき、おそらく当時のフィルムカメラで沢山の写真を撮ったに違いない。

 今日おっさんは商談が始まる前、何冊もの昔のアルバムを見せてくれた。「興味深いですね」と半ばお愛想の言葉を発しながら何となくページを繰っていたがその手が驚きで止まった。一葉の写真の中で懐かしい同期入社の女性3人が懐かしい制服(というより作業服だ)に身を包み写真の中で並んで笑っていたからだ。背景も僕が知っているかつての居室だと分かる。おそらく撮られた本人達も覚えてはいないだろうし、僕はその当時ドイツにいたと思われるのでおっさんのことも何も知らなかったが。更にページを繰るとインドで撮られた先輩方の写真が何枚も出てきた。彼らも当時インドにおける技術指導者として度々このおっさんの店を訪問していたのだ。懐かしさと、日本企業っていつでも同じようなこと(今の僕のように)を繰り返しやっているんだというおかしみと。時の缶詰。少しの間、タイムスリップしたように昔あった世界の空気に浸りもう何年も会っていない人達、古い写真の中の人達だけでなく昔の会社の先輩や同僚達のことを思い返した。それは良い時間だった。同じ業界とはいえ撮影された15年も20年も後に、転職した僕がインドの一都市でその写真と出会う偶然の面白さ。

 10年、15年、20年。
 色々なことがありました。
 

 それにしても、写真ってすごいね。




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by t-nakanobu2 | 2012-06-17 03:41 | 日記
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